王家のしきたり? 3
片手に小さな箱。
ビロードに包まれたその箱の中身。
「これは・・・俺の初タイトルの賞金で買った・・・」
「・・うん・・・」
蘭世はそれ以外の言葉は出なかった。
「俺の・・・精一杯だ。」
「・・うん・・・」
中身は、小さなルビーのリング。
蘭世の誕生石。
「俺自身がお前に示せるものなんてこんな程度だ。それでも・・」
俊は蘭世の指にそのリングをはめながら、続ける。
「ついてきて・・・・欲しい・・・」
蘭世の両目から涙がこぼれて、花びらの上で真珠になる。
「・・・お前だけだ・・・・俺の・・そばにいて欲しいのは・・・」
涙で濡れた瞳が輝く。
「他には・・・何もいらない・・」
「真壁くん・・・私・・・」
「・・・・・・・愛している・・・・」
風に飛ばされそうな小さな声で。
それでも蘭世の耳にははっきりと聞こえた。
「・・・ずっと・・そばにいさせて・・・・」
2人の唇が重なった。

・・・幸せに・・・

・・・どうか・・幸せに・・・

過去の人からの言葉が風に形を変えて二人を包んだ・・・・・。
そして、魔界の太陽が2人を明るく照らした。

証を確認した・・・・・・

声にならない声、言葉にならない言葉が2人に降ってきた。
それは城にいたアロンにも、ターナにも聞こえたものだった。

穏やかに微笑む二人。

そして、迎えた魔界城にて行われた婚姻の儀式。
格式ばったそれに俊も蘭世も困惑気味ではあったのだが。何とかつつがなく執り行われた。
その日の蘭世はいつも以上に美しく見えた。
その日の俊はいつも以上に誇らしげに見えた。
そしてそんな二人を見守る、すべての人々に祝福を。
と、言うようなすばらしい式だった・・・。

・・・そして。
「なんなんだ-!!!!!!この部屋はぁ!!!!」
という俊の絶叫が部屋に響き渡った・・だが、それも部屋だけだった。
バカ高い吹き抜け。
完全に整った防音設備。
恐ろしいほどのレースに飾り立てられた不必要に広いベッド。
二人で入るにちょうどよい大きさのバスルーム。
「しきたりだから。」
涼しい顔でそういってのけるとアロンとフィラは俊たちをこの部屋に押し込んだ。
ドアは翌朝まで開かないのだ。

―初夜。
ということらしい。

部屋にはご丁寧に香まで焚かれている。
二人とも戸惑ったような困ったような表情で視線を交わす。
「はぁ〜〜〜〜」
俊はため息をつく。
「とりあえず、着替えようぜ。風呂はいるなら入ってこいよ。」
「う・・うん・・・」
蘭世をバスルームに追いやると俊はその日一日着せられていた式典服とやらを脱いでいく。
一応、気を使ったのかクローゼットには部屋着のようなものは置かれていた。
「江藤・・・のは・・?」
そこには自分の分だけ。

蘭世は蘭世でどうにもならないほど心臓が跳ね上がっていた。
それで気持ちを落ち着けようと深呼吸。
そして、シャワーを浴びてからフィラから渡された袋を開ける。
”バスルームであけてくださいね”とのメモつき。
「!!!」
あけて蘭世は眼が点になる。

いわゆる、ネグリジェである・・・がその・・・・・。
真っ白いシルクで出来ていると思われるそれではあったが・・・・。
薄絹で、その・・・・透けるのだ。
そして、身体のラインに沿う様にカッティングされている。
「これって・・・・・」
紙片がひらりと落ちた。

 ”ドレスと同じ素材で作られています。
  着てみてください
               フィラ”

確かに蘭世に合うように作られたそれではあった。
それでも恥ずかしさでその上からバスローブをしっかり着こんでバスルームをでる。
「ま・・真壁くん・・・いいよ・・・」
「あ・・ああ・・・」
蘭世は俊を見てびっくりした。
「持って・・きてたの?」
「い・・いや。ここにおいてあったんだ・・」
「そ・・そうなの・・・」
ぎこちない会話、俊は蘭世をなるべく見ないようにバスルームへと行く。

あがってきた俊と二人、どことなく気まずい空気。
「あ・・あの・・・何か飲む?お茶・・・あったよ・・」
「ああ・・・そうだな・・」
なぜかベッドから離れた場所にあるテーブルで向かい合ってお茶を飲むだけの二人。
いかにも・・・な空間に二人とも戸惑っているのだ。
「しっかしなぁ・・・」
俊は呆れたようにベッドを眺める。
蘭世は赤くなって眼を伏せた。
経験がないわけではない、俊が・・・初タイトルを取ったときに一度だけ二人きりで夜を過ごした。
それ以来、二人ともそういう行為に至ることはなかったのだ。
どこか、いけないことのようで。
「とりあえず・・・お前あそこで寝ろよ。」
俊はベッドを指差し、、
「俺はこっちで寝るから。」
といって大きめのソファに座った。
「ああ、上に掛ける何かだけくれ。」
そういった俊の手を蘭世はつかんだ。
「うん・・・・」
「どうした?」
「あ・・あのね・・・・」
真っ赤になって蘭世は俯く。
・・・・真壁くんの・・腕の中がいいな・・・

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