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「・・初夜に・・・夫婦がもっとも寄り添えるように調合してあるんだそうだ・・」
「な・・にぃ〜〜!!!!」
王家の人間は、かなりの重圧がかかってしまうこととなる。
その重圧を分かり合えるのは家族だけ、そう最初は伴侶であるから、その絆を深めるために作られた・・。
との文書があるそうだ。
俊は憮然とした表情。
アロンはおどけた風に
「でも、効いただろ?」
「うるせー。」
確かに、昨夜の二人はいつになく燃えていたのは確かだ。
「二人でどうぞ、今日は何も予定はないでしょう?」
「ああ・・・」
二人はドアを閉めて、下がった。
・・・まったく・・・
俊は重めのバスケットを窓際のテーブルの上に置いた。
「ん・・・・」
小さな声を出して、ベッドの上で横たわっている蘭世。
その表情は、柔らかく、穏やかで。
満ち足りた、幸せな空気が部屋を包む。
俊を包む。
今まで見たことのないような瞳で蘭世を見つめる俊・・・・・・。
バスケットをあけると、テーブルの上に手早く並べる。
ポットからコーヒーを注ぐと先ほどより強く香りが漂う。
「んん・・・・・・?・・・」
蘭世がゆっくりと身体を起こす。
「おはよう・・」
逆光が寝ぼけた蘭世を射る。
「・・おはよ・・・!・・う・・・真壁く・・・・」
あっというように口を両手で押さえて
「・・俊・・・」
「朝飯だってよ。ほら。」
そのまま起きようとして、蘭世ははっと気がつく。
「きゃっ!!」
慌ててブランケットを頭からかぶる。
「どうした?」
笑みを含んだ声で蘭世をからかう俊。
「な・・あ・・あの・・・」
「ほらよ。」
ばさりとバスローブがブランケットの上にほおり投げられる。
腕だけ出してもそもそと着込むとようやく蘭世が真っ赤な顔をしてベッドから出ようとする。
そして、たつことなど出来ないことに気がつく・・・。
「どうした?」
再度のからかい。小さく口の中で笑っているのがわかる。
「もう!!」
・・ばかぁ・・・
さもありなんというように俊が蘭世の方へ歩いてくる。
ひょいとベッドから蘭世を抱き上げる。
「たてねぇんだろ?」
片目をつぶってみせる。はじめてみるそんなおどけた俊に蘭世は思わずどきっとしてしまう。
心臓が跳ね上がる。
俊を見つめられなくなる。
気がついているのかいないのか、俊はそ知らぬ瞳。
テーブルの脇の椅子に蘭世をおろす。
「ほらよ。」
ぶっきらぼうな言葉と裏腹の優しさ。
「うん・・・・」
照れくさそうにそっぽを向きながら。
蘭世は暖かい何かを感じながら、朝食を食べ始める。
・・・やべぇ・・・
俊もまたコーヒーに手を伸ばしながら、必死であった。
抱き上げた蘭世の感触に思わず、そのままベッドに押し倒してしまいそうだったからだ。
・・・まだ・・残ってんのかなぁ・・・?・・
苦味の強いコーヒーに、何もいれずに飲み干す。
先ほどアロンに耳打ちされたときに、そっと手渡された包み。
中身は見なくてもわかっていた。
・・・後1ヶ月もすれば・・・
あっちでのそれも終わる。その日に・・・というわけだ。
「どうしたの?」
不思議そうに蘭世が見つめる。
「何でもねぇよ。食っちまえよ。」
「うん。」
・・・あれで・・・あれして・・・あんなのも・・・
俊はほくそ笑んだ。
俊がそんなことを考えているとは露知らない幸福感の真っ只中にいる蘭世でありました・・・・。
お・わ・り
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