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「江藤・・・・」
「や・・・」
俊の片手がアパートの電気に伸びるとその手を懸命になって押さえ込む蘭世。
「だめ・・・」
「見たいんだよ・・」
「いやぁ・・・」
強引にでも出来るのに、それでも俊はそれ以上の無理強いはしなかった。
高校を卒業する、そのときに2人は卒業旅行とやらに出かけた。
その先で、ようやく、そう、ようやく俊は本懐を遂げられた。
それからというもの、俊の試合が終わったその夜は、二人で過ごすのがなんと無しに決まりごとになっていった。
なんの制約もない、数少ない時間。
俊は試合の興奮冷めやらぬ中蘭世を求めた。
何度も、何度でも。
蘭世はそんな俊を恥ずかしがりながらも、受け止めてはいてくれたがそれでも、がんとして拒むことがあった。
『灯りをつけること』
手で弄り、舌で味わっているそれを、見る事が出来ない。
暗がりの中、ぼんやりとその白い姿は浮かび上がるのだが、全てを白日のもとで見つめたい。
それでも無理強いしたくはない、俊。
全てが見たい・・・。
心も、
素肌も、
想いも、
全てが自分にあるのは知ってはいても。
全てを見たい。
自分のものにしたい。
ほかの誰も知らない、彼女。
自分だけしか知らない、彼女。
甘い声で、切ない喘ぎで、囁くように。
部屋に響く、彼女の吐息。
ほかの誰も・・・・。
・・・俺の・・・だ・・・
そう思っていることを彼女に知らしめるために。
・・・誰のものでもない、俺だけの・・・女・・・俺だけのためにここにいる・・・・・
そして
・・・・俺の命も、あいつだけのもの・・・・・
彼女がいなければ、ここにはいない。
存在価値すらない。
俺は彼女がいなければ、ただのでくのぼうだ・・・・
「真壁くん・・・好きよ・・・・」
何度でも。言って欲しい、俺のものだと。
「ぁぁ・・・!!ま・・かべ・・くん・・・」
その吐息の隙間すら、俺で埋め尽くしたい・・・
俊は、蘭世の身体を余すことなく愛撫していく。
何度触れても、何度確かめても、何度でも、新鮮で、どれだけでも愛おしい。
だからこそ、見たい。
この眼で、確かめたい。
自分が愛している女の全てを。
見せて・・・・見たい。
俊の唇が蘭世の肌を滑る、その首筋に、その胸元に、打ち震える乳房に。
その姿全て。
晒したい、自分の前で、江藤蘭世という、自分だけの為にここにいる女を。
「江藤・・・」
熱い吐息とともに、耳打ちをしながら・・・
「見たいんだ・・・見せてくれ・・・」
いつもより、想いのこもった言葉に、この夜、蘭世は否定の言葉が紡げなかった・・・・・・。
ただ、そっと眼を閉じた。
カチン・・・・小さく音がして、蛍光灯の灯りが部屋全体を照らした。
・・・きれいだ・・・・・誰よりも、誰よりも・・・・・
声には出来ない、ただ、見つめて。
「真壁・・くん・・・・・」
全身に降り注ぐ視線に、蘭世は身をよじって逃げようとするも、その動きを封じ込めるかのように俊が蘭世の両手を頭の上に押さえ込む。
白い肌に点々と残る痕跡、愛し、愛された証。
・・・愛している・・・・なくすものか・・・・
俊は蘭世の両足に身体を割りいれると、その中心部に指を添える。
「っ・・ぁ・・・」
くちゅりと音を立てて、俊を迎え入れる準備は整っていた。
指先を滑らせるように上下に動かし、そのままそっと泉の中へ埋め込む。
「ぁ・・・」
追い出すように締め付けるその胎内。
ゆっくりと中をかき回していく、根元まで入り込むとそのまま指先の第一関節を曲げ、その部分を引っかく。
「やっ・・・ぁぁ!・・」
初めての感覚が蘭世の肢体を跳ねさせる。
指の腹で押し込むように擦りあげると一気に体温が上がるのがわかる。
「や・・やぁ・・だめぇ・・」
押さえが利かない身体の変化に戸惑いながら、その快楽を受け止め、俊に伝えてくる。
・・怖い・・・怖いの・・・いやぁ・・私が・・私じゃ・・なくなるぅ・・・・
そんな戸惑いすらも、いとおしくてならない。
もっと、啼かせたくなる。
もっと、求めさせたい。
互いが互いを求めるその熱さ。
「ぁ・・ぁぁ!!・・ま・・・かべ・・くぅ・・ん・・・・」
蘭世の喘ぎが切羽詰ったように、切なげに上がる。
俊はその絶頂の寸前に指を抜き去る。
「・・っ・・ぅ・・・」
声にならない吐息が蘭世のピンクの濃くなった唇から洩れる。
その吐息も吐き終らない刹那に俊は溢れ出した泉に、分身を擦りつけ、そのまま一気に入り込んだ。
「んっ!!ぁぁ!!」
白磁に紅色を撫でたような、美しい様を見せながら、全身で俊を感じているのがわかる。
熱いぬめり、まとわりつく胎内は、俊をもまた甘美な快楽の渦へと巻き込んでいく。
そして緩やかな律動から、激しく奥まで貫くような。
「ん・・はぁ・・ぁぁん・・ま・・かべ・・・くぅ・・・ん・・・」
「え・・とう・・・・」
言葉少なく、それでいて、口付けは甘くて。
気持ちが混じり、二人が一つにほどけあって溶けきる瞬間、お互いの快楽の頂点を味わった・・・・・。
何度求めても、どれだけ責め立てても、腕の中にいる。
愛しい、彼女、自分だけのもの。
そのことを信じているのに、知っているのに。
眼が覚めたら消えてしまっているのではないかと、想い、苦しむ。
いっそ壊れてしまえば、楽になるかもしれない。
でも2人この先を見つめたいから壊すことなんて出来ない。
恋焦がれているのはあいつじゃない、俺だ。
「好きよ、真壁君、大好き。」
・・・俺もだよと返せばいい、言葉に出来なくても。
「貴方のためなら、運命だって変えてみせる。」
・・俺の運命はいつだってお前だけだ。
「ん・・・・」
細く頼りない身体が腕の中で身じろぎをして、俊の胸に全てを預けてくる。
抱きしめて、眠ろう。
そして、いつかは永遠に・・・・・。
Fin
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